ヘッドマウンドディスプレイを被った状態で体を動かさずにコントローラ操作でVR空間内を滑らかに歩行移動すると,車酔いのような状態(VR酔い)が発生しやすくなります。これに対し,実際に体を動かして移動すると壁やモノにぶつかる危険性があります。この問題を解消するには,現実と同じような状況(視覚だけではなく,体性感覚や前庭感覚等が刺激された状況)を定位置で作り出す必要があります。 この問題に対する主なアプローチとして,ルームランナーのように歩行した分だけ床を引き戻す方法や,足自体を引っ張ったり滑らせる等して引き戻す方法が提案されています。 これに対し,我々はユーザの進行方向に大腿部を支持し,歩行動作に応じて映像を変化させることによってVR空間内の歩行移動を錯覚させる,これまでにない新しいタイプのVR歩行装置を提供致します(歩行感覚呈示装置および呈示方法,日本国特許第6795190号,国際特許出願中)。

新発想のアイデア

本手法は机の前にクッションを当てて目を瞑り,歩く風景を思い浮かべながら前に進もうと足踏みすると歩行感覚に近い感覚が得られたという発明者自身の体験がヒントになっています。

本装置に興味がある方はまずは手持ちのクッションで同じことを試してみて下さい。少しでも歩く感覚に近い感覚が得られた方はVRにおいても同じ効果を得ることが期待出来ます。VRヘッドセットを所持している方はコントローラで前進移動(速度は手調整)しながら同じことを試してみて下さい。

シンプルな動作原理

進行方向に大腿部が支持された状況においては足が物理的に前に出ないため,荷重センサを用いて体の預け具合や足の動きから歩行動作や歩行速度を推定し,これに合わせて映像を変化させることで歩行感覚を錯覚させます。
本手法は体にセンサやシューズ,ハーネス等を装着する必要がないため,わずらわしさもなく手軽に使用することが出来ます。本装置は言わば体重計を横向きにしたようなものですので装置構造は至ってシンプル,消費電力も少なく(0.2W程度),従来法のように床が動いたり足を滑らせる違和感はありません。

デスクに固定可能な本体

Crus-TypeCは本体を机に取り付けるだけであれば設置場所は取りません(取り付け可能な最大板厚42mm。本体重量4.2kg,本体は専用スタンド(別売)に取り付けることも出来ます)。

高さ調整可能な軽量な専用スタンド

専用スタンドの土台サイズはΦ600㎜(重量9.5kg)/750㎜(重量13.5kg)の2種類,本体取付後の総重量はΦ600㎜で13.7kg,Φ750㎜で17.7kgと簡単に持ち運びや設置が可能です。スタンドの高さは2㎝毎に5段階(10cm)高さを調整可能なSサイズ(地面から大腿部までの高さ488㎜~588㎜程度。身長目安140~160㎝程度)と10段階(20㎝)高さを調整可能なLサイズ(大腿部高さ588㎜~788㎜程度。身長目安160~200㎝程度)の2種類を用意しています。

本体・スタンドカバーは水透明,若草(半透明),スカイブルー,レッドの4色から選べます。

専用ソフトウェアおよびキーエミュレーション

Crus-TypeCでは,専用の常駐ソフトウェア(for Windows)によって,前~横方向ユーザの体の預け具合,左右それぞれの足の上がり具合,進行方向,歩数等をリアルタイムに推定,モニタリングすることができ,VR空間内の歩行・旋回速度や反応感度のパラメータをUDP通信で指定アドレス・ポート宛に送信することができます。同時に,前方向,斜め前方向,横方向に体を預けながらの歩行動作をキーボード操作やマウス操作に置き換え(キーエミュレーション)することが出来ます。これらのキーは常駐ソフトウェアで自由にカスタマイズ出来ますので,前進・横移動が可能なWADモードや,前進・旋回が可能なモード等に切り替えることが可能です。このため,マウス・キーボードで移動操作可能な既存ソフトウェアにおいては,これらの操作を歩行動作からの入力に置き換えることが可能です。また,SteamVRと連携することで歩行動作をVRコントローラのトラックパッドやサムスティック操作等にバインドすることでVR空間内への移動へと変換することができます。

SteamVRにおけるコントローラバインド

SteamVRにCrus-TypeCドライバーをインストールすることにより,SteamVR側ではCrus-TypeC専用の常駐ソフトウェア(for Windows)からUDP受信したVR空間内における進行方向,歩行・旋回速度や反応感度のパラメータをもとに,VRコントローラの左右のトラックパッドやサムスティック操作のほか,ジョイパッドのアナログスティック操作にバインドすることが可能です(現状,特定のVRコントローラ自体をエミュレーションすることは出来ませんが徐々に対応していきます)。常駐ソフトウェア側で設定した各種パラメータは即座にSteamVRに反映させることができます。

ソフトウェア開発キット

専用の常駐ソフトウェア(for Windows)から受信した歩行動作や各種パラメータをもとにアバターの動作および移動操作に反映させることで,歩行動作からVR空間内での移動へと変換することが可能です。UE4やUnity用のプラグインやサンプルプログラム等をまとめたソフトウェア開発キットは本ウェブサイトより順次ダウンロード可能にしていく予定です。